2020年3月12日木曜日

「優しさは強さ」 卒業式学校長の言葉

 卒業生の皆さん、ご卒業、おめでとうございます。
今、みなさんが手にしている卒業証書。それは9年間にわたる義務教育を修了したという証(あかし)です。
  9年前の小学校一年生の春を思い出してください。きっと自分では一人前のつもりでいたと思います。でも、9年後の今、成長したみんなからみれば、一人にはとてもしておけない、心配で不安定な存在だと思います。そんなみんなを、9年間、心から心配して見守って、そして支えてくれた家族が、今日は参加できません。締めくくりにふさわしい、立派な卒業式だった、そう報告できるよう、この後も思いを一つにしていきましょう。
  振り返ると、中学に入学してから、1年、2年と色々と心が揺らぐことがあったと思います。それを糧として成長を果たすことができるのか。そんな皆さんの真価が問われるのが、この中学3年という義務教育最後の年でした。
  そして、みなさんは、大きな成長を果たしてくれました。それが最も表れていたのが、全クラスで、「印象に残っている行事ナンバーワン」だった修学旅行だと思います。公共の場での移動の様子、旅館でのスリッパの美しいといえるほどの整頓、レクでの一人ひとりの笑顔、班別自主行動の様子、どの場面を切り取っても、お互いがお互いを思いやり、楽しい、思い出に残る修学旅行にしようという思いが伝わってきました。また、合唱コンクールでは、一クラスあたりの人数が30人を切り、クラスによってはパートが5、6人になってしまうクラスもあり、さすがに厳しいかな、と思っていました。しかし、その思いは、良い意味で裏切られました。迫力、心を一つにした表現、声質、さすが3年生、心に「ズン」と響いてきました。愛川東中学校の合唱の伝統を立派に引き継ぐ、感動的な合唱でした。
 他にも、全学年5クラスとなった中での体育大会での縦割りチームでのリーダーシップもありました。それら大きな行事にもまして、例えば普段のチャイム着席など、一番大切な日常でもたくさんの成長を見せてくれました。そんな様子を切り取ろうと、毎日カメラを片手に学校に中を見て周るたびに、うれしさを感じていました。
  令和の時代最初の卒業生であるみなさん。新しい時代の担い手になっていくことは間違いありません。この新しい時代に、何を大切にしていけば良いのでしょうか。どんなに科学技術が進歩しても、「人と人との関わり」が時代の核であることは間違いありません。それは、皆さんがこれからの人生で、試行錯誤しながら自分で見つけていくものでもあります。ただ、そのヒントは、この令和元年度に日本で初めての行われたラグビーワールドカップや、新型コロナウイルスが広まった時の対応に隠されていると思います。
 ラグビーワールドカップ日本大会が、過去最高の大会で会ったと世界中から賞賛されたのはなぜだったのでしょうか。それは、日本が開催国として、常に相手への敬意と思いやりを持っていたから、だと思います。相手の国の文化を理解しようとし、敵味方関係なく良いプレーには声援を送り、相手国の国歌をいっしょに歌ったり、そんな枠を超えての応援が世界中の人々の心を動かしたのだと思います。
 
そして、そんな「思いやりには、思いやりで応えたくなるのも、また人」です。世界の各チームが色んなところで台風などの自然災害に被災した人達のために働いてくれたりしました。また、中国でコロナウイルスが蔓延し始めた頃に、日本からマスクが贈られました。その恩に応えようと、今度は中国からマスクが贈られたりもしました。
 そんな、相手を思いやる気持ちや優しさが、本当の強さとして、多くの人達の心を動かしたのです。「優しさ」は「強(剛)さ」。決して、力による強さ、ではありません。そしてその強さをより強くしていくためには、自分の考えにとらわれず、様々な立場の人の様々な考え方に誠実に向き合うこと、そして自分という芯をしっかり持ちながらも、柔軟に考えられる、そんな柔軟な強さが必要だと思います。
  そんな意味で、みんなのお父さん、お母さん、地域の方々、そして今日まで皆に関わってきた先生方の思いを込めた学校教育目標「仁 誠 靭 ~思いやりがあって優しく、誠実で、心身がたくましい生徒」は、今後皆さんがこれからの時代を生きていく、一つの指標になると思います。心の片隅において、この愛川東中学校を誇りを持って卒業していってほしいともいます。
  「東の国さがみ野の、西北遙か山と川、合い寄るところ高き丘」。校歌に歌われるこの高台にある皆さんの母校、愛川東中学校は、いつまでも皆さんのことを見守っています。
  末尾になりましたが、みなさんのご健康とご多幸、そしてご活躍を祈念して、式辞とします。
 
    令和2年3月11日 愛川町立愛川東中学校 校長 大泉哲郎

地域の愛

卒業式当日のブログでも触れましたが、本校の地域学校協働活動推進委員さんが、学校の卒業式で、マスクを手に入れられなかった生徒に配る分のマスクがたりないらしい、と言う話を地域の方にしてくださったところ、元本校PTA役員の方が、「そういうことなら!」とこのマスクが貴重な時に、60枚入りのマスクを二箱寄付してくださいました。おかげさまで、当日は全員がマスクを着用することができました。本当にありがたいことです。やはり学校は、地域の方々の愛に包まれているのだと強く感じた出来事でした。今後も寄付いただいたマスクは、生徒たちのために有効活用させていただきたいと思います。また、愛川東中学校区の地域学校協働活動推進委員さんが、手作りマスクの作り方をご紹介くださりました。HPにリンクを貼っておきます。ご参照ください。(学校に着けてくる用は無地・白でお願いします)